
東方アレンジの世界は多様性と無数の作品に満ち、その活況は一向に衰えない。数多くのサークルが存在しているが、その中でも「凋叶棕」はそのユニークな魅力が際立っている。今回は、その特異性と人気の秘密を解き明かしていきたい。
サークル名の「凋叶棕」(Diāo Yè Zōng)は中国語で「朽葉色」という意味を持ち、その読み方は「ティアオイエツォン」。東方妖々夢に登場したキャラクター、橙のテーマ曲「ティアオイエツォン (withered leaf)」が由来であると考えられる。
「凋叶棕」は、RD氏によって率いられる「RD-Sounds」が手掛ける東方アレンジサークルで、ボーカル楽曲を中心にインスト楽曲も幅広く制作している。アレンジと作詞はRD氏が担当し、「めらみぽっぷ」氏をはじめとした数多くの才能あるボーカルによって歌われる。
東方Projectの世界を音楽で再構築し、楽曲を通して物語を語る。これが凋叶棕の、まさに魔法のような活動だ。「聴く同人誌」──よくこう表現されるのだが、これは凋叶棕の魅力を最も的確に表した言葉といえよう。音楽だけでなく、豊かなビジュアルと物語性によって東方の世界を表現する凋叶棕は、まるで新しい種類のメディアと言っても過言ではない存在だ。
凋叶棕は主に夏と冬のコミックマーケット、そして春の博麗神社例大祭という3つのイベントに参加し、年間を通じておおよそ3枚のアルバムを制作している。リリースのペースに驚かされるだけではなく、その一つ一つの作品が妥協のない高い物語性を保っており、東方アレンジの世界に絶えず新たな視点を提供し、リスナーに驚きと興奮を与え続けているのだ。
これらのアルバムを手に取ると、まずブックレットのページ数に驚かされるだろう。各曲に対応したページには、原作の一場面を切り取ったような、原曲との関連性を思わせるイラストが描かれている。これらのイラストは主に「はなだひょう」氏によるもので、凋叶棕の世界観を彩っている。
凋叶棕の魅力として絶対に欠かせないのが、ただ原曲のメロディに歌を添えるだけではなく、原作のキャラクターや世界観を綿密に反映し、考察の余地を存分に残した奥深い歌詞である。その独特な雰囲気は圧倒的にシリアスでありつつ、時にメランコリーな雰囲気を帯びている。東方Projectのキャラクターの性格や背景、ストーリーを音楽と言葉で表現し、聴くだけでなく読んで魅せるものとなっていて、他のサークルの作品体験ともまた違った印象を残す。楽曲の中の深い物語は、まるで一冊の本を読み進めるような感覚なのだ。
そんな凋叶棕の楽曲だが、作品として完全に理解するためには、東方Projectについての正確な知識が求められる一面もある。そのため、原作に詳しい東方ファンや、ボーカルアレンジよりインストアレンジを好んで聴いてきたという人々にこそ聴いてほしい。東方アレンジの固定観念を打ち破る新鮮な体験となるだろう。そういった意味では、凋叶棕は上級者向けのサークルとも言えるかもしれない。
しかしながら、凋叶棕の作品を初めて体験する人々にとっても決してハードルが高い訳では無い。楽曲そのものや物語性自体を楽しむことができるため、東方Projectの知識が少なくても十分に楽しめるだろう。音楽のクオリティも高く、ロック・ポップス・トランス・民族音楽からクラシックに至るまで、様々なジャンルが取り入れられているため、単純な音楽として聴いていても飽きることが無いのだ。それゆえ、誰もがその魅力に触れることができるだろう。
凋叶棕を初めて聴く方は、まずはお気に入りの原曲のアレンジから聴き始めてみるのがオススメだ。あるいは、「東方我楽多叢誌」によるインタビューでも言及されている、「奉」(ささげ)から聴き始めるのが良いかもしれない。原曲を素直に活用したアレンジが多く、凋叶棕の音楽性の幅広さを感じることができる万人向けのアルバムだ。
このように「凋叶棕」は、東方アレンジの世界でも特に個性的でユニークな存在感を放っている。その音楽は単に耳で聴くだけでなく、心で感じ、脳で思索し、理解を深めることで真の魅力が引き立つと言える。ブックレットを手に取りながら聴くスタイルはもちろん、CDそのものに施された仕掛けや、ジャケットと各ページに隠された遊び心を探す楽しさもある。ダウンロード版やサブスク配信は手軽に聴けるというメリットもあるが、ぜひ一度実際のCDを手に取って、魔法のような音楽世界を体感してみてほしい。
以上、「凋叶棕」についての紹介記事でした。これからも東方アレンジだいすきクラブでは、多くの東方アレンジサークルや楽曲を紹介していく。ご期待ください!
東方アレンジだいすきクラブの独断と偏見による「凋叶棕」ベストソング
ハロー、マイフレンド。
東方アレンジだいすきクラブの独断と偏見による「凋叶棕」が好きな人にオススメのアーティスト
Yonder Voice、Foxtail-Grass Studio、森羅万象