「U.N.オーエンは彼女なのか?」が20年以上も愛され続ける理由とは?

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2002年にリリースされた「東方紅魔郷」のExステージボス、フランドール・スカーレットのテーマ曲「U.N.オーエンは彼女なのか?」は、20年以上の歳月を経てもなお、第18回東方Project人気投票で堂々の1位を獲得するなど、その魅力が色あせない不朽の名曲である。もはや、解説不要の名曲であるが、今回はあえてその持続的な人気とその理由に迫ってみたい。

「U.N.オーエンは彼女なのか?」は、アップテンポなリズムに加え、謎めいた雰囲気と狂気を感じさせるサウンドが特徴的な、独特なファンタジー調の楽曲だ。シンセサイザーや鉄琴系の電子色を活用したメロディが組み合わさり、メロディアスかつカオティックな要素が織り交ざったこの楽曲は、フランドールの狂気をうまく表現している。この曲が多くのファンから愛される理由は、圧倒的な中毒性とそのクセになるリズムからだろう。

さらに、変ロ短調という珍しい調が、多くの聴衆に強烈な印象を与えたという読者からの声も寄せられた。調とはざっくり言えば、楽曲がどのような音で構成されているかを示すもので、曲の印象を左右する大きな要素の一つ。変ロ短調は弦楽器で演奏すると響きが悪く、あまり使われない調だ。重く暗い荘厳な響きが特徴で、ショパンのピアノソナタ第2番「葬送」が代表的な使用例。ポピュラーミュージックへの使用例としては、筆者が思い付く限りでは、アニメ「アタックNo.1」のオープニングテーマなどが挙げられるものの、その数はわずかだ。読者からも指摘される通り、この調を使用した曲は限られているために、その存在感が聴衆の記憶に深く刻まれたのかもしれない。

そんな「U.N.オーエンは彼女なのか?」人気の火付け役となったのは、数多くのアレンジ曲、ニコニコ動画におけるMAD動画、さらには様々なパロディーやオマージュ、リスペクトによって幅広い層に楽しまれるようになったことだ。

東方Projectがインターネットを中心に広がっていく過程で、「COOL&CREATE」のビートまりお氏による「最終鬼畜妹フランドール・S」をはじめとするアレンジ、それをMAD動画に仕立て上げたもの、フランドールのファンアートなど多くの二次創作が生まれ、その輪がどんどん広がったこととも、この曲の人気に大きく関わっている。こうした二次創作を通じて、東方Projectそのものが多くの人々に広まり、東方ファンが増え続ける原動力の一つとなってきたのだ。

実は東方Project以外の元ネタも含まれている

東方Project人気投票2023の感想を見ても、「最初に聴いた曲」「東方を知るきっかけになった曲」など、多くのファンがこの曲とともに東方Projectと出会ったと語っており、この曲が彼らにとって特別な存在であることが伝わってくる。

また、フランドールというキャラクター自体も、この曲が未だに支持される理由の一つだろう。性格は予測不能で、時として無邪気さを見せながらも、一方で狂気に満ちている。ゴシックとロリータの要素を融合させたような衣装、特徴的なカラフルな一対の翼は視覚的にも強いインパクトを与える。フランドールというキャラクターが好きで楽曲を聴くようになったという意見も少なくない。

このように、「U.N.オーエンは彼女なのか?」は、多くのファンにとって「これぞ東方」という象徴的な存在であるがゆえに、新作がリリースされてもなお、未だにトップクラスの人気を誇っているのだろう。時代を超え、新旧のファンが共感できる普遍的な魅力を持つ「U.N.オーエンは彼女なのか?」は、まさに東方Projectの歴史そのものと言えるのだ。

原曲もサブスクで聴ける時代である

【追記】読者さまよりご指摘を受け、調に関する考察を加筆いたしました。情報提供に感謝申し上げます。