「U.N.オーエンは彼女なのか?」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.9
「U.N.オーエンは彼女なのか?」のボーカルアレンジを厳選してご紹介するこの連載は、これで9曲目となった。今回は、凋叶棕が贈る名曲『禁符「フォービドゥン・ゲーム」』についてお話ししよう。
禁符「フォービドゥン・ゲーム」
凋叶棕は、RD-Soundsという名義で活動するRD氏が主宰する東方アレンジサークルで、東方Projectの原曲を様々なジャンルにアレンジしている。凋叶棕についてはアーティスト紹介記事も併せて参照してほしい。
この曲は、凋叶棕が2016年に発表したアルバム「掲」に収められている。フランドールの狂気と孤独を描いたもので、ヘビーなギターと不安定なメロディが不穏な雰囲気を醸し出している。アレンジはRD氏が手掛け、歌っているのはnayuta氏だ。
楽曲としては、特にサビの部分がリスナーに強烈なインパクトを与える。このサビでは、高音で叫ぶような歌声が非常に印象的だ。サビの後半で勢いよく歌いきったのち、リズムの密度が減少し、一転してテンポが緩やかに感じる。囁くように歌ったり、徐々に盛り上げたりと、楽曲全体を通じて緩急がつけられることで、フランドールの壊れっぷりや狂気をうまく表現しているのだ。nayuta氏の感情を込めた歌声も曲の魅力を高めている。
凋叶棕のアルバムには様々な工夫が凝らされており、この楽曲が収録された「掲」も例外ではない。このアルバムにおいてブックレットは冊子状ではなく曲ごとに対応するカードとなっていて、『禁符「フォービドゥン・ゲーム」』のカードには可愛らしくも禍々しいフランドールのイラストと歌詞が書かれている。これらのカードをすべて並べると一枚のイラストとなり、さらに、このアルバムに収録された別の楽曲の歌詞カードにもなるのだ。
このアルバムのテーマは「スペルカード」。そして、この曲のタイトルは『禁符「フォービドゥン・ゲーム」』となっている。直訳すれば、「禁じられた遊び」という意味になるだろう。その名の通り、フランドールのスペルカードをテーマにした楽曲だ。フランドールは、禁忌「レーヴァテイン」や禁忌「フォーオブアカインド」など、「禁忌」と名の付く強力なスペルカードを持っている。これらのスペルカードは、フランドールにとっては遊びの一つかもしれないが、禁忌と言えるほどにどれも強力なものだ。この曲は、そんな彼女がスペルカードへの思いを表現したものといえよう。
この楽曲の大きな特徴は、フランドールの狂気が滲み出る叫ぶような歌声だろう。強い気持ちを込めて叫んだり、泣き叫ぶように表現されたり、場面に応じて歌い分けられている。これには背筋がゾクゾクとするような感覚すら覚えてしまう。さらに、原曲のメロディをあえて裏メロディとして活用し、感情豊かな高音域で一気に歌い上げることで、フランドールのスペルカードの制御不能な力や狂気を表現している。このアプローチは、原曲を大切にしつつも大胆なアレンジを行う、凋叶棕らしい手法と言えるだろう。
『禁符「フォービドゥン・ゲーム」』は、その独特なアプローチと音楽性から、多くの東方アレンジファンに愛されている楽曲の一つだ。フランドール・スカーレットのキャラクターに想いを馳せ、狂気と不安定さを感じるには最適な一曲と言えるだろう。CDを手に取って聴くことをお勧めしたいが、サブスクリプションサービスでも十分に魅力を感じ取ることができる。未聴の方は、ぜひ『禁符「フォービドゥン・ゲーム」』の世界を楽しんでみてほしい。