少女理論観測所の壊れた人形のマーチを解説|MVとCD音源の違いとは?

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「U.N.オーエンは彼女なのか?」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.8

前回の記事では森羅万象の「悪戯センセーション」を紹介した。8回目となる「U.N.オーエンは彼女なのか?」のボーカルアレンジ特集では、少女理論観測所の「壊れた人形のマーチ」について語らせてほしい。

壊れた人形のマーチ

少女理論観測所は、ギタリスト兼コンポーザーのTera(テラ)氏が率いる音楽サークルで、東方Projectのボーカルアレンジを中心に活動している。この楽曲「壊れた人形のマーチ」は、2016年にリリースされたアルバム「Border on Blossom」に収録された。さらに、2018年には公式MVも制作され、楽曲の人気を不動のものとした。

アルバムに収録された音源とMVの音源との間には大きな変化が見受けられる。ミキシングとマスタリングが新たに施され、これによって音楽が以前よりも鮮明で聴き応えのあるものとなった。単なるミックスの変更だけでなく、一部の楽器も差し替えられている。例えば、金属胴ような響きを持ったスネアドラムが、柔らかく丸みを帯びた木胴のような響きに変わっていることはわかりやすい変化だろう。スネアは楽曲のリズムとメロディにおいて重要な要素であり、差し替えによって明るくポップな印象が強化され、暗い歌詞との対比がより強調されるようになった。是非一度聴き比べてみてほしい。

「壊れた人形のマーチ」は、「U.N.オーエンは彼女なのか?」に加えて「魔法少女達の百年祭」を原曲としたアレンジ楽曲である。編曲と作詞はTera氏が手掛け、ボーカルには森羅万象から「あやぽんず*」氏を迎えている。あやぽんず*氏は、低い声と高い声を使い分け、楽曲の展開にメリハリをもたらしている。あやぽんず*氏の歌唱スタイルの幅広さが際立つ楽曲であるといえよう。

空想的で童話やおとぎ話を彷彿とさせるような明るい曲調で、しかし歌詞はダークで、フランドールのキャラクター性をうまく表現し、「無邪気さと狂気」が交錯する独特な雰囲気を生み出している。ダークメルヘンな「壊れた人形のマーチ」の不思議な世界へと引き込んでくるのだ。Tera氏らしいギターサウンドがこの雰囲気にうまく調和しており、メロディのアレンジ、サビのオシャレで洗練されたコード感、アコーディオンとオルゴールで魅せる間奏パートなどと合わせて数々の聴き所が存在しており、Tera氏の卓越した編曲センスをたっぷりと感じ取ることができる楽曲となっている。

そのダークな歌詞からは怖い印象を受けるかもしれないが、フランドールの心情を想像する余地があり、人形にレミリアの姿を見ていたのか、そもそも本当に人形と遊んでいたのか、「人形遊び」の意味を考察しながら聴いてみてもまた楽しい。歌詞が楽曲に深いストーリー性をもたらしており、リスナーを引き込む要素の一つとなっているのだ。

「壊れた人形のマーチ」は、楽曲自体のクオリティはもちろん、あやぽんず*氏のかわいらしい歌唱や歌詞の世界観の魅力からも、フランドールのファンにはお馴染みの一曲となっている。見聴の方はぜひ一度耳にして、その魅力に触れてみてほしい。

それでは、次回も新たなボーカルアレンジ楽曲をご紹介するので、お楽しみに!