
「U.N.オーエンは彼女なのか?」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.6
今回ご紹介するのは、SOUND HOLICのユーロビートの名作「Grip & Break down !!」である。SOUND HOLICは、GUCCI氏をはじめとするクリエイター集団で、主にユーロビートを軸にポップスやロックなど多種多様なジャンルで活躍している。ボーカルも複数名からなるが、Nana Takahashi氏の存在感が強い。「Grip & Break down !!」はNana Takahashi氏の歌唱力とパワフルな歌声が際立つ一曲となっている。
Grip & Break down !!
この「Grip & Break down !!」は、2008年のアルバム「紅 -KURENAI-」が初出で、その後もいくつかのアルバムやリミックスで再度取り上げられている。Nana Takahashi氏が歌唱する楽曲を集めたベスト盤「NANA HOLIC」、2017年リリースの「EUROBEAT HOLIC」に収録されたリミックス版、そして2022年リリースの「鈴仙 -REISEN-」に収録された別のリミックス版など、多数のバージョンが存在する。
作詞はBlue E氏が担当し、Nana Takahashi氏が歌唱。初出のバージョンではアレンジをSHU氏とGUCCI氏が担当。2017年のリミックスはDJ Command氏、2022年のリミックスはBlackY氏がそれぞれ手掛けている。
この楽曲は、東方アレンジの中でも特に音楽ゲームでよく聞かれる一曲だ。力強いダンスナンバーとして、「Break down」の曲名に相応しく、東方ユーロビートの代表作として多くのリスナーに認識されている。ヘビーなギターサウンドから始まり、徐々に盛り上がるリズム感、そしてユーロビート特有のドライブ感を際立たせるこの曲は、SOUND HOLICの得意とするエレメントが詰まっている。
全編英語詞の歌詞には、破壊と創造のダイナミズムが織り交ぜられ、楽曲がもつ強烈なビートやエネルギー、それに伴う感情の高揚がよく表現されているのだが、なにより遊び心を感じられるのが良い。曲中に、次のようなフレーズがあるのだが…
N’ak Kode Tihs Ot Tuyg Uk Oyr’o Non Odi Et Ur Us Ia Kah Ow O Nom Ur Uyar A Ot Ira
SOUND HOLIC「Grip & Break down !!」
一見すれば何語なのかもよく分からない文字列であるが、逆から読むと「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力 ギュッとしてドッカン」という日本語になっていることが読み取れる。東方文花帖でのフランドール・スカーレットのセリフ「きゅっとしてドカーン」が元ネタで、楽曲タイトルもここから来ているものなのだろう。Blue E氏の独特のセンスが光る瞬間だ。筆者が初めて楽曲を聴いたとき、この歌詞の意味が全く分からなかったことは良い思い出だ。
Nana Takahashi氏のパワフルでノれる歌唱は、SOUND HOLIC独自の世界観をより一層引き立てている。何度か繰り返される「Grip & Break down!!」というフレーズが、その独特な響きと彼女の歌声と相まってとても印象的だ。そのフレーズが「きゅっとしてドカーン」と日本語訳されるところもまたギャップがあって面白い。
以上、「Grip & Break down !!」の解説と紹介でした。音楽性、歌詞、そしてそのパフォーマンスを通じて、SOUND HOLICの魅力を存分に感じ取っていただけたら何よりだ。