「U.N.オーエンは彼女なのか?」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.5
フランドール・スカーレットのテーマ「U.N.オーエンは彼女なのか?」のアレンジ曲は数多く存在するが、今回は特に注目すべき一曲をご紹介したい。Liz Triangleによる「Who Killed U.N.Owen」だ。
Who Killed U.N.Owen
Liz Triangleは、森羅万象のkaztora氏とlily-an氏を中心とした音楽ユニットで、他複数のメンバーを加えて東方アレンジを手掛けるサークルが「りすとら」となる。ただし、リリースされるCDは「Liz Triangle」名義となっている。かつて活動を休止していた森羅万象から独立し、当初その後継サークルという位置付けであったが、その後、森羅万象が活動を再開したことにより、姉妹サークル的な存在となった。
「Who Killed U.N.Owen」は2010年にリリースされたアルバム「B1」に収録されている。このアルバムは人気が高い原曲が多いためか知名度も高く、Liz Triangleの中でも最高傑作アルバムだとの声も多い。のちに、暁Recordsからリリースされる「First Memory/Next Memory」にStack氏の歌唱するバージョンが収録されるが、本稿では初出の「B1」バージョンを取り上げたい。
アルバム「B1」に収録されたこの楽曲は、暁Recordsとのコラボ曲という扱いで、ACTRock氏がアレンジ。lily-an氏が歌唱している。原曲の持つ狂気をダークなプログレッシブ・ロック風のアレンジにうまく昇華させている。lily-an氏の歌唱は、一見可愛らしいが内に狂気を秘めたフランドール・スカーレットのイメージにも見事に合致する。lily-an氏の声は、どこかあどけなさを感じる一方で、歌詞の狂気を強調し、楽曲のダークな雰囲気を引き立てているのだ。
歌詞から見て取れるのは、一見楽しげなパーティーの裏に潜む不穏さ、そしてフランドール自身の孤独と狂気が複雑に絡み合った世界観だ。イタズラ好きな彼女の、一方で孤独な存在を表現したフレーズ「アナタは私、私はだぁれ?」は、曲全体を通して繰り返され、フランドールの独立した存在感や他者に対する無関心さ、ある種の達観した価値観を象徴している。
イントロからはホラーやハロウィンのような恐怖感が漂っているが、決してただ怖いだけの曲ではない。一瞬静まり返り、「鏡よ鏡」という歌詞からサビへと盛り上がる演出や、中毒性のあるリズム感には何度も聴き入ってしまうことだろう。長めの曲ではあるが、多彩な展開が飽きさせず、始終フランドールの世界観を鮮やかに描き出している。「フランらしい」無邪気な狂気をこれほどまでに表現した曲は他にはないだろう。
Liz Triangleの「Who Killed U.N.Owen」は、原曲の持つ狂気とフランドール・スカーレットのイメージをうまく表現した名アレンジだ。歌詞の物語性とlily-an氏の可愛らしくも狂気を感じさせる歌唱が相まって、原曲が持つフランドールの雰囲気を新たな視点から表現している。この機会に、ぜひ耳を傾けてみていただきたい。