「U.N.オーエンは彼女なのか?」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.2
新連載の「U.N.オーエンは彼女なのか?」のボーカルアレンジ紹介記事第1回目は、EastNewSoundの「緋色月下、狂咲ノ絶」を取り上げたが、今回は凋叶棕の楽曲「Demon Strundum」を紹介していきたい。
Demon Strundum
凋叶棕(ティアオイエツォン)は、RD氏が率いるRD-Soundsの東方アレンジ名義である。「Demon Strundum」の編曲および作詞はRD-Sounds名義となっており、ボーカルには歌ってみた界隈で活動していたルシュカ氏が起用されている。
この楽曲は、凋叶棕がサークル「ふぉれすとぴれお」に提供し、2010年のアルバム「Melody Memories」にて初リリース。その翌年、凋叶棕自身のアルバム「綴」(つづり)に収録された。「綴」は凋叶棕が外部に提供した曲を中心に構成された総集編のようなアルバムだ。ここではその「綴」に収録されているバージョンについて紹介する。
まず、「Demon Strundum」のプリイントロは、英語圏でよく知られたイギリスの伝承童謡「ハンプティ・ダンプティ」の引用から始まる。この童謡は日本ではあまり馴染みがないが、「一度壊れると容易には元に戻らないもの」を指し示す比喩として英語圏では現在でもしばしば用いられているそうだ。
Humpty Dumpty sat on a wall,
ハンプティ・ダンプティ へいに すわったHumpty Dumpty had a great fall.
ハンプティ・ダンプティ どかっと おちた。All the King’s horses and all the King’s men,
王さまのウマ、へいたい、けらいと みんなでCouldn’t put Humpty together again.
Humpty Dumpty | 読んで知る! 英語の言葉の面白さ – 朝日出版社ウェブマガジン
ハンプティ もとに もどせなかった。
楽曲の歌詞全体を読み解くと、レミリアとフランドールの姉妹愛がテーマとされているようだが、ハンプティ・ダンプティの引用からは彼女たちの間に何が起きたのか、二度と戻らない何かを暗示しているようにも感じられ、物悲しいストーリーを予感させる。
それと同時に、「Demon Strundum」の歌詞は、フランドールの孤独と愛されたいという感情、そしてレミリアとの間柄を巧みに描き出しているようだ。そこには、姉妹の間に何があったのか、それがどのような結末を迎えたのかを考察する余地がたっぷりと存在しているのだ。
音楽的には、ピアノを主体とする物悲しい雰囲気が特徴的で、静かな展開から徐々に盛り上がっていく構成となっており、楽曲としても非常に聴きごたえがある。サビからは音楽性が一転し、力強さが際立つ。物悲しい雰囲気を残しつつ、ストリングスやコーラスなどが織り交ぜられた壮大な曲調へと展開していく。
「Demon Strundum」は、多くの「U.N.オーエンは彼女なのか?」のアレンジと並んで、そのオリジナリティと深みのある歌詞の世界観が高い評価を受けている。原曲の旋律を踏まえつつも、凋叶棕独自の解釈を加えることで新たな色彩をもたらし、その魅力を一層引き立てているのだ。
皆さまもぜひ一度、歌詞の意味を考察しながら、凋叶棕の「Demon Strundum」の魅力に耳を傾けてみてはいかがだろうか。この曲は、「U.N.オーエンは彼女なのか?」を原曲とするボーカルアレンジの中でも、その深みと独自性から一聴する価値がある一曲といえよう。