幽閉サテライトの孤独月を考察|「破壊された目を」という歌詞。目とは一体何のこと?

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「U.N.オーエンは彼女なのか?」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.10

「U.N.オーエンは彼女なのか?」のボーカルアレンジを厳選してご紹介するこの連載。今回、記念すべき10曲目として取り上げるのは、筆者にとって思い出深い楽曲である幽閉サテライトの「孤独月」だ。この曲は、美しいメロディと感動的な曲調、歌詞のメッセージ性が大きな特徴。その魅力を改めて探っていきたい。

幽閉サテライト「孤独月」

「孤独月」は、幽閉サテライトのアルバム「色は匂へど 散りぬるを」に収録されている楽曲で、2010年にリリースされた。この曲は、Iceon氏がアレンジし、senya氏が歌唱および作詞を担当した。なお、Iceon氏、senya氏はそれぞれ「アイスオン」「せにゃ」と読むのが正しい。

Iceon氏は、幽閉サテライトの多くの楽曲のアレンジを手掛けるキーボーディストだ。楽曲「色は匂へど 散りぬるを」など、幽閉サテライトを代表する数々の名曲を生み出してきた。その正体は、KONAMIの音楽ゲームやDaisy×Daisyへの楽曲提供などで有名な「Another Infinity」というユニットのメンバーであり、当時から著名な作曲家として知られている人物である。

「孤独月」は、senya氏が幽閉サテライトとして初めてレコーディング・歌唱した特別な一曲で、幽閉サテライトの原点の一つとも言えるだろう。senya氏自ら作詞を手掛ける、希少な楽曲。筆者が初めて触れた幽閉サテライトの楽曲で、今でもずっと聴いている大切なアレンジ曲だ。(リリース順としては「感情ケミストリー」が先となる。)

この楽曲は、フランドール・スカーレットの孤独な一面を切なげに表現しており、静かに響く感動的なピアノから始まる、Iceon氏らしいポップスナンバー。senya氏の美しい歌声と相まって切なげな雰囲気を醸し出し、随所に挿入されたテクニカルなギターソロも大きな聴きどころとなっている。

そして、何度か繰り返される「破壊されたモノを」という歌詞。目とは一体何のことか。東方Projectの設定資料集である「東方求聞史紀 〜 Perfect Memento in Strict Sense.」には、フランドール・スカーレットの能力、「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」について以下のように解説されている。

 紅魔館の中でも仲の良い妖怪は少なく、常に孤立している。姉のレミリアですら、一緒にいる姿は余り確認されていない。
 そう言った理由からか、未だ謎が多い妖怪である。破壊の能力を持ち、触れようが触れまいが物を破壊してしまうと言われている。一緒に遊んでも作った物を片っ端から壊されてしまうので、誰も一緒に遊んでくれないのだろう。
 どうやって物を破壊するのかというと、全ての物質には『目』という最も緊張している部分があって、そこに力を加えればあっけなく破壊できるのだ。彼女はその『目』を移動させ、自分の手の中に作る事が出来るという。つまり、彼女の手の中にある『目』を自分で潰せば、物は壊れてしまう。抗い様の無い恐ろしい能力である。

東方求聞史紀 80ページより

フランドール・スカーレットの、ありとあらゆるものを破壊してしまうがゆえの孤独と葛藤、そして孤独に耐え明日への希望を持ち続ける様子を、senya氏らしいメッセージ性で描き出していることがわかる。

「U.N.オーエンは彼女なのか?」のアレンジは、フランドール・スカーレットの狂気的な面を表現したり、ダークさを全面に押し出すものが多いのだが、この曲は切なさや優しげな雰囲気を前面に押し出す楽曲となっており、他のアレンジ曲とも一線を画している。切ないメロディと歌詞は、リスナーの心に深く残り、多くの幽閉サテライトファンにとっても特別な思い出となっていることだろう。

このように「孤独月」は、アップテンポな原曲を美しくも切ないメロディとして活用するIceon氏のアレンジ手法、senya氏の伸びの良い透き通った歌唱、そして数少ないsenya氏自身による作詞と、「U.N.オーエンは彼女なのか?」アレンジの中でも特筆すべき一曲となっている。まだ聴いたことがない方は、ぜひ一度聴いてみてほしい。きっと心を打たれることだろう。幽閉サテライトの「孤独月」、ぜひお楽しみいただきたい。