
「亡き王女の為のセプテット」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.5
「亡き王女の為のセプテット」のボーカルアレンジ特集をお届け。今回は、幅広いジャンルやスタイルで人気を誇る日本の音楽サークル、IOSYSの作品「運命狂サディスティック」を紹介したい。IOSYSは、そのユーモア溢れる歌詞やパロディ、幅広い音楽性で数々のヒット曲を生み出してきた。
運命狂サディスティック
札幌の音楽制作チーム、IOSYS(イオシス)は、たくや氏を代表とする多数のメンバーからなる著名なグループだ。2008年にリリースされた「チルノのパーフェクトさんすう教室」などのヒット曲を生み出し、幅広いジャンルやスタイルで楽曲制作を行っている。彼らの楽曲は、ポップス、ロック、エレクトロニカ、ハードコアなど多彩な音楽性を持ち、歌詞やPVにはユーモアやパロディが満載だ。また、東方アレンジだけでなく、アニメやゲームへの楽曲提供、オリジナル楽曲の制作やインターネットラジオ放送など多岐にわたる活動を行っており、およそ2000曲もの楽曲を制作している。近年では、「スカーレット警察のゲットーパトロール24時」がTikTokでバズったことが、大きな注目を集めた。スマートフォン向けゲーム「ブルーアーカイブ」や、VTuber「壱百満天原サロメ」氏への楽曲提供も話題になった。
「運命狂サディスティック」は、2007年に頒布されたアルバム「東方河想狗蒼池」に収録されている。この曲の作詞は夕野ヨシミ氏が、歌唱はあゆ氏が、アレンジはArima.Y(有馬わい)氏が手掛けた。Arima.Y氏とあゆ氏は、ユニット「Dear Chocolat」を組んで活動している。この曲は、四つ打ちのダンスミュージックのような構成で、「亡き王女の為のセプテット」のみを原曲とする。トランスとも近い要素を持ち合わせており、スピード感があってノれる曲調となっている。その他、オケヒ(オーケストラル・ヒット)が多用されていることも印象的。
オケヒとは、オーケストラで全員が同時に音を出す「ジャンッ!」というような音を指す。この音色は、1980年代に電子楽器が発達したことで、広く使用されるようになった。登場当時は先進的で斬新な音色で、特にポップスやダンスミュージックなどの楽曲で多用された。その印象的なサウンドは、80~90年代の音楽にエネルギッシュな雰囲気を与える効果的な手法であった。しかし、オケヒが一種の音楽のトレンドとして流行し、多数の楽曲で使われるようになると、オケヒのサウンドは徐々に陳腐化し、多くのリスナーにとってマンネリ気味の印象を与えるようになった。
現代ではそのような流れを逆手にとって、オケヒの音色は、レトロな雰囲気を演出するために使用されることもある。過去の音楽に対するノスタルジーや、80年代のカルチャーに対する流行が再燃していることもあり、オケヒはその特有のレトロ感やチープ感を活かして、現代の楽曲においてもあえて使われる場面がある。特に、ゲームミュージックやアニソンなどのジャンルでは、まだまだ活用されていることが多い。
四つ打ちが主体となっている「運命狂サディスティック」では、リズムが安定していて、踊れるような縦ノリとなっているのだが、オケヒの強いサウンドがこのリズムに合わせて効果的に配置されている。これによって、曲全体の力強い印象を高め、リスナーの盛り上がりを煽る役割を果たしている。特に、オケヒがビートの強調や転換部分で使用されることで、曲の展開が引き立ち、印象深いサウンドが生まれている。レミリアの孤独や力への渇望、そして彼女が抱える運命についてのストーリーを語る歌詞は、スピード感のある曲調やオケヒのサウンドと組み合わさって、彼女の内面に秘められた強大な力が表現されているかのようだ。
この記事を読んでくださった皆さま、ありがとうございます。この曲は古い曲なので、しばらく聴いていない方や、まだ聴いたことのないという方もいらっしゃることだろう。是非この機会に、「運命狂サディスティック」を聴いていただきたい。Arima.Y氏ならではのアレンジが、「亡き王女の為のセプテット」の世界を新たな視点で楽しませてくれることだろう。