ちょこふぁんの進化と挑戦|「Bloody†Nightmare」を読み解く

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「亡き王女の為のセプテット」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.4

東方アレンジ界隈において、流行の要素を取り入れたMVの制作や最新原曲を迅速にアレンジに取り入れるなど、独自かつ斬新な手法で楽曲制作を展開し、人気サークルに成長した新進気鋭の「ちょこふぁん」。その魅力と特徴を、2021年にリリースされたボーカルアレンジ「Bloody†Nightmare」を通して解き明かしていこう。

Bloody†Nightmare

ちょこふぁんは、すばる氏とHASEKO氏の二名による同人サークルだ。すばる氏は「胡桃すばる」という名義で個人サークル「Chocolate Fantacy」を立ち上げ、2016年からイベントへの参加をスタート。東方Projectを中心にイラスト本などを制作してきた。後に、HASEKO氏が加入し、ボーカルアレンジへ参入。HASEKO氏は、「SuganoMusic」など多数のサークルへの楽曲提供や、「Eurobeat Union」が主催する大会での優勝歴があり、ちょこふぁんへの加入前から実力派アレンジャーとして知られていた。ニ名体制となって以降、ユーロビートやEDM調のボーカルアレンジに、可愛らしいイラストと歌唱を組み合わせるという独自のスタイルを確立。しかし、2019年からの活動を支えてきたHASEKO氏が、2023年12月をもってちょこふぁんを卒業することをTwitter上で発表。この発表により、ちょこふぁんの今後についての関心が高まっている。

「Bloody†Nightmare」は、ちょこふぁんの象徴とも言える楽曲だ。この楽曲は、ちょこふぁんの同名のアルバムに収録されており、東方紅魔郷の「亡き王女の為のセプテテット」と「U.Nオーエンは彼女なのか?」という二つの原曲を組み合わせ、ユーロビート調にアレンジしたものだ。この原曲の組み合わせは、ちょこふぁんが2019年にリリースした「ストロベリームーン」と同様だ。「ストロベリームーン」は、高い評価を得ているがゆえに、同じ原曲の組み合わせでもう一度アレンジを作るというのは難しい挑戦だったはずだ。しかし、ちょこふぁんは、初期の人気曲を超えて進化していきたいという意気込みと、ちょこふぁんの2年間の進化も感じてほしかったという意図で、この挑戦に臨んだのだろう。

「ストロベリームーン」と「Bloody†Nightmare」を比較すると、どちらも原曲の使用方法やアレンジ後のジャンルはよく似ている。歌詞に目を向けても、「紅」や「狂気」などのテーマを共有していることがわかる。しかし、歌詞の解釈によって、異なる印象を与えている。「ストロベリームーン」の歌詞は、希望と前向きなエネルギーを感じさせる一方、「Bloody†Nightmare」の歌詞は、よりダークで神秘的な雰囲気を持っている。同じ原曲でも曲調や歌詞の方向性は異なっていて、また違った世界観を持っているのだ。

「Bloody†Nightmare」は、ジャンルとしてはスピード感のある4つ打ちEDMとなっているものの、エレキギターやヴァイオリンなどの生系のサウンドが組み合わされている。イントロはオーエンのメロディをうまく活用したフレーズに始まり、歌唱部分から「亡き王女の為のセプテテット」のメロディにスムースに移行する。サビでは再びオーエンのメロディに戻ってくる構成となっているのだが、そのサビは原曲のスピード感をそのままに、一気に歌い上げていく、聴いていて気持ちの良い構成となっている。

また、MVも見逃せないポイントだろう。ちょこふぁんのアートワークは、音楽だけでなく視覚的な楽しみも提供してくれるのだ。MVのイラストは、すばる氏が手がけており、かっこいい曲調の中に、イラストの可愛らしさが際立っている。「レミフラ」好きにはまさに必見といえよう。初期のMVから着実に進化を遂げ、演出面も強化されている。HASEKO氏がアレンジを担当し、すばる氏が歌唱と作詞を手がけ、さらにMVのイラストまで制作したこの楽曲は、ちょこふぁんの他の楽曲と同様に、その独自性とクリエイティビティが評価され、ちょこふぁんの代表曲の一つとして数えられている。

このように、「Bloody†Nightmare」は、ちょこふぁんの才能と個性が凝縮された一曲だ。これからの発展が楽しみな新進気鋭のサークルであったがゆえに、HASEKO氏の卒業は非常に残念ではあるが、今後のそれぞれの活動に期待していきたいところだ。