セプテットアレンジの定番、Silver Forestの「永遠に幼き紅い月」を紹介|歌詞の意味も考察

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「亡き王女の為のセプテット」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.1

現在、弊誌では「ネクロファンタジア」「オーエン」「ハルトマンの妖怪少女」のボーカルアレンジをご紹介する連載を行っているが、このたび新たに「亡き王女の為のセプテット」をピックアップしたい。

「亡き王女の為のセプテット」は、「東方紅魔郷」の6面ボス「レミリア・スカーレット」のテーマ曲だ。この曲のタイトルに含まれる「セプテット」という言葉は、「七人組の演奏(七重奏)」という意味合いがあるものの、実際のところこの曲は七重奏ではない。東方紅魔郷の作中では、七人組や亡くなった王女の姿は特に描かれておらず、ステージ数やボスの数といった説があるものの、正確な曲名の由来は謎めいている。ゲームに同梱された「おまけ文章」の中の「裏音楽コメント」では、特に深い意味はなく、むしろ雰囲気や語感を重視して名付けられた曲名であることが仄めかされている。

そんな「亡き王女の為のセプテット」であるが、数多くの東方原曲の中でも非常に人気が高い楽曲だ。個人的には、バロック調を帯びた独特なコード構成からはアレンジが難しいような印象を受けるのだが、東方アレンジ界隈はアレンジャーの技術レベルも高く、原曲の人気にも負けず多数のアレンジ楽曲が生み出され続けている。

そんな中から、各種サブスクリプションサービスで楽しむことができるボーカルアレンジ楽曲を厳選してご紹介していきたい。

永遠に幼き紅い月

有名な「亡き王女の為のセプテット」のボーカルアレンジとして、Silver Forestの「永遠に幼き紅い月」をご紹介したい。古い楽曲とはなってしまうのだが。

Silver Forestは、NYO氏が主催する同人サークルで、「銀森」「シルフォレ」などとも呼ばれている。かつてはメインボーカルのさゆり氏や、後に「猫森アキ」と改名するアキ氏を筆頭に、数多くの東方アレンジ曲を制作していた。当時はサークル数も少なく、特にボーカルアレンジ好きにとっては絶対に外せない存在で、「sweet little sister」「つるぺったん」など、多くの有名曲を生み出してきた。

しかし、2012年にとある事情からさゆり氏がサークルを離れることとなり、そのまま解散となってしまった。2013年に新ボーカルを迎え再結成したものの、その後もメンバーの入れ替わりや脱退が相次ぐ。そんな中、2019年に詳細な経緯は不明ながら、さゆり氏がサークルに復帰する。大きな話題にこそならなかったものの、ファンは復帰を暖かく迎え、解散前の最盛期を想起させるメンバー構成に戻ったことを喜んだ。

「永遠に幼き紅い月」は、2007年にリリースされたアルバム「東方月見が丘」に収録されている。当時、隆盛を誇っていたニコニコ動画においても有名な楽曲だった。NYO氏が作詞とアレンジを手掛け、さゆり氏が歌唱した楽曲で、ベストアルバム「Silver Forest – 2006-2012 BESTⅡ」にも収められている。また、Silver Forestのもう一人のアレンジャーであるKaNa氏がリミックスしたバージョンも存在する。

この楽曲は、レミリア・スカーレットの二つ名「永遠に紅い幼き月」をもじった曲名に相応しく、レミリアの感情をうまく表現したものとなっている。歌詞は、500年以上の歳月を生きてきた吸血鬼であるレミリアの心情と深く結びついており、その永遠の生命ゆえに安らかな眠りを待ち望んでいるかのような様子が表現されている。レミリアの永遠の生命、美しさと儚さ、強さと決意、そして「運命を操る程度の能力」が、この歌詞を通じて見事に表現されている。ちなみに、同じくレミリアをテーマとするSilver Forestの「BLOOD ON BLOOD」という楽曲とは、歌詞がほとんど同じ。

歌詞の魅力もさることながら、特に際立つのがヴァイオリンの旋律。ピアノと見事な調和を成すことで、雅やかなバラード調の楽曲に仕立て上げられている。儚くも美しいメロディーと、さゆり氏の透き通るような歌声と組み合わさって、リスナーの心に深い印象を刻むことだろう。

Silver Forestの歴史には様々な波乱があったものの、その中で生まれた楽曲は決して色褪せることはない。「永遠に幼き紅い月」は、彼らの芸術的な一瞬を切り取った傑作であり、「亡き王女の為のセプテット」アレンジとして外せない存在であることは確かだ。