
「ネクロファンタジア」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.8
「これから流行る どの東方アレンジもすごい!」などの執筆を挟んでおよそ3ヶ月ぶりとなった「ネクロファンタジア」のボーカルアレンジ特集、第8回目をお届けしたい。今回は、XL Projectの「Necro Fantasia」をご紹介するぞ。東方アレンジサークルとしては最古参の一つであるXL Projectは、多数の素晴らしい楽曲を生み出してきた。「Necro Fantasia」はその中でも特に輝く一曲である。
Necro Fantasia
XL Projectは、estha氏が大学時代に立ち上げた音楽レーベルで、主にゲーム音楽のアレンジを行っている。公式サイトの過去の記載が失われてしまって情報が乏しいが、筆者の記憶では東方アレンジを手掛ける前から、Key作品やスクエアのゲーム音楽のアレンジをしていた覚えがある。2005年に頒布されたアルバム「東方小曲集 -唯我独尊-」が隠れた人気作品で、この作品を皮切りに東方アレンジも行うようになった。
XL Projectの楽曲「Necro Fantasia」は2009年に頒布されたアルバム「At the Sacrifice」の収録曲である。2010年のベストアルバム「MONOCHROME」にも収録された。この曲は、estha氏がアレンジを手掛け、mintea氏が歌唱を担当したネクロファンタジアのボーカルアレンジだ。
estha氏は、エンターテインメントグループ「GEOGRAPHIC」に所属するミュージシャンでもある。GEOGRAPHICは、「好奇心のためのエンターテイメント」をテーマに音楽・映像・ゲーム・イベントなど様々な分野で活動するクリエイター集団で、estha氏はその中心的なメンバーの一人だ。
mintea氏とは、どのような歌手なのだろうか。名前の読み方は「みんてぃあ」。過去には碧苡かあゆという名義でも活躍していて、2008年頃からコミケやM3などのイベントにも参加している。Teadropsという個人サークルを主宰し、コンセプトアルバムの制作など多数の楽曲をリリースしてきたが、2017年には私生活の多忙によりTwitter上で活動休止を発表した。
この曲の音楽的な魅力について、具体的に分析してみよう。「Necro Fantasia」は、ピアノやシンセを主体としたバラード調のポップスナンバーで、mintea氏の爽やかでありながらも芯のある歌声が楽曲に完璧にマッチ。よく聴くと気付く水滴が落ちるような音は、シンセの音色と組み合わさって透き通ったような印象と神秘性をもたらしており、八雲紫を象徴するような優雅で神秘的なサウンドを表現することに成功している。大きめの音量に調整されたドラムのフレーズもいいアクセントを加えている。見逃されやすいポイントであるが、良く動くベースラインや間奏のギターのリフも印象に残る。
この楽曲は、インターネット上でも大きな反響を呼んだ。ニコニコ動画最盛期においても非常に知名度の高い楽曲で、当時「スキマツアー」と呼ばれた動画群の一種でその知名度をさらに高め、大きな人気を集めた。
XL Projectの東方アレンジは、2011年のアルバム「Claudia」以降、長らく新譜がリリースされていなかったが、2019年のアルバム「Alicia」で8年ぶりの活動再開を果たした。mintea氏をボーカルに迎えるなど、懐かしい体制での感動的な復活となり、estha氏はその後もイベントのDJとして参加するなど精力的に活動している。戻ってきてくれたことが嬉しく、これからの活躍が本当に楽しみだ。
この素晴らしい楽曲「Necro Fantasia」は、有名どころが多いネクロファンタジアアレンジとしては、現在の知名度は決して高くはないかもしれないが、ネクロファンタジアのファンにとって必聴の一曲だ。未だ聴いたことがない方は、是非この機会に美しいメロディと歌声に酔いしれてほしい。