「ハルトマンの妖怪少女」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.7
「ハルトマンの妖怪少女」ボーカルアレンジ厳選まとめVol.7では、SOUND HOLICの楽曲「BAD EYE -地底の埋火-」を特集する。ロックとラップの融合によって生み出された、熱いエネルギーが満ち溢れる一曲。709sec.氏のヴォーカルとアレンジがこの曲にどのような魅力を与えているのか、じっくりとご紹介したい。
BAD EYE -地底の埋火-
SOUND HOLICは、2006年に結成された同人音楽サークルである。東方Projectの楽曲アレンジだけでなく、オリジナル楽曲の制作や音楽ゲームへの楽曲提供なども行っている。幅広いジャンルの楽曲を制作しており、特に「漢字シリーズ」と呼ばれるアレンジアルバムは、東方Projectファンに広く支持されている。このシリーズは、各原作タイトルから取った漢字をタイトルとしており、当初一文字だったが、後に二文字のものもリリースされるようになる。これらの作品は多くのコンポーザーが参加し、さまざまなジャンルの楽曲を楽しむことができるアルバムとして人気を博している。
今回ご紹介する、SOUND HOLICの「BAD EYE -地底の埋火-」。この楽曲は、「ハルトマンの妖怪少女」をロックとラップで再解釈した作品であり、ボーカルとアレンジは709sec.氏、作詞はBlue E氏が担当している。2012年の夏コミで頒布されたアルバム「Energy Breaker」に収録されており、地霊殿原曲のアレンジを集めたこのアルバムは、そのタイトル通り、エネルギッシュで力強いサウンドの楽曲が多く収録されている。709sec.氏は、SOUND HOLICで多数の楽曲を制作しており、「漢字シリーズ」以外にも個別のアルバムを持っている。「Energy Breaker」もその一例である。
「BAD EYE -地底の埋火-」は、709sec.氏の力強い歌声とアレンジ力が存分に発揮されている。特徴的なシンセサウンドと、燃えるような熱いギターサウンドが印象的なイントロから始まり、709sec.氏の楽曲としてはやや珍しい日本語の歌唱へと展開する。高いテンションのラップパートも挿入され、多彩に変化する要素が聴いていて飽きさせない。ラップは709sec.氏らしい英語の歌詞となっているが、全体的には日本語が中心で、全英詩の楽曲をあまり聴かないリスナーにも親しみやすい構成だ。
歌詞についても考察してみたい。その内容は、こいしの孤独と存在の葛藤を深く掘り下げたものとなっている。第三の目を閉じたことで無意識の状態になり、一人で彷徨い続けるこいしの姿を描いているが、この楽曲ではその運命を悲観的に捉えるだけでなく、孤独を自己理解と真の自由を得る旅のようなものとして表現している。「嫌われ者のフィロソフィ」というフレーズからは、自己受容、孤独、そして他者との関係性について、哲学的な視点から歌っていることをうかがわせる。
また、ラップパートでは、「イマジナリーフレンドと呼ばれている」「大人は存在を認識できない」といった内容が英語で歌われている。書籍「東方求聞口授」によると、こいしは大人には見えないが一部の子供たちには見える妖怪であり、成長するにつれて忘れ去られる「空想上の友達(イマジナリーコンパニオン)」であると解説されているが、これが元ネタとなっていることが推察される。
「BAD EYE -地底の埋火-」は、エネルギッシュな音楽と哲学的な歌詞が見事に融合した傑作だ。Blue E氏の作詞センスは、原作キャラクターの個性や書籍の設定をうまく生かしつつ、独自の音楽表現として昇華させている。709sec.氏とBlue E氏のコンビネーションが生み出す多様性と物語性には、多くのリスナーが魅了され続けている。この楽曲はリリース後も時を経ても色褪せることなく、新たな聴きどころを見つけることができるだろう。是非、この機会に耳を傾けてみてはいかがだろうか。
クレジット表記
作曲:ZUN
アレンジ:709sec.
作詞:Blue E
歌唱:709sec.