石鹸屋の「id恋し いと恋し」を紹介。idとは?

この記事は約3分で読めます。

「ハルトマンの妖怪少女」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.4

「ハルトマンの妖怪少女」ボーカルアレンジ厳選まとめの第四弾となる今回の特集は、石鹸屋の「id恋し いと恋し」をご紹介。力強いロックサウンドと感情を揺さぶる歌詞が絶妙に融合したこの楽曲の魅力に迫りたい。

id恋し いと恋し

石鹸屋は、2005年に東方アレンジから活動をスタートした同人サークルだ。バンド体制となっており、現在のメンバーはボーカルとギターの秀三氏・ドラムのhellnian氏・サポートベースの内山博登氏・サポートギターの小林ヒロト氏で構成されている。東方アレンジを中心に活動しているが、オリジナル楽曲も制作しており、2010年にはSPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビューを果たしている。石鹸屋の魅力は、ライブ感あふれる力強いバンドサウンドと、「エモさ」を感じるボーカルにあるだろう。代表曲には「東方妖々夢 ~ the maximum moving about~」「シャボン」などがある。

「id恋し いと恋し」は、2016年にリリースされたアルバム「東方クロスハート」に収録された楽曲だ。この曲は秀三氏がアレンジ、作詞し、歌唱している。タイトルに込められた「id」とは、心理学の用語である「イド」を指す。オーストリアの心理学者、精神科医であるジークムント・フロイトが提唱した精神分析学の概念で、人間が生まれつき持つ無意識の本能的な欲求や衝動を表すそうだ。この曲では、イドをテーマに古明地こいしの心の葛藤が描かれている。

こいしは、相手の心を読む能力を持っている。しかし、その能力が原因で周りから嫌われることを知り、第三の眼を閉じて能力を封印し、自身の心をも閉ざしてしまう。その結果として、「無意識を操る程度の能力」を手に入れ、無意識に過ごすだけの日々を繰り返してしまう。「id恋し いと恋し」の歌詞は、自分の無意識に支配されているこいしの心の葛藤を表現しており、相手への愛情や依存と同時に現実との乖離や他人への危害を恐れている。他人とコミュニケーションをとりたいが、それが叶わないということに悲観している姿がこの楽曲で描写されている。

「id恋し いと恋し」の曲調を一言で表わせば、中毒性のある特徴的なリズム感が印象に残るロックナンバーといったところだろう。石鹸屋らしいギターサウンドと気持ちいいギターソロも聴きどころだ。明るく、楽しげな印象すら与えるサウンドとは裏腹に、歌詞には切実な願いや葛藤が込められている。軽快でクセになるような曲調である一方、考察の余地を与える歌詞がリスナーを引き込む要素のひとつとなっている。

このように、「id恋し いと恋し」は石鹸屋の東方アレンジ楽曲の中でも素晴らしい作品のひとつだ。ポップなこの楽曲も、歌詞を通じて考察すると儚げで切ない気持ちが込められていることがわかる。「いと恋し」という曲名が物語るように、「こいし」が全開になった作品だ。ぜひこの楽曲を聴いて、「石鹸屋」と「こいし」の魅力に浸っていただきたい。次回の楽曲紹介もお楽しみに!