【CYTOKINE】sEE NEW THE WORLD, SHE KNEW THE WORLD|初出は初音ミクだった?

この記事は約4分で読めます。

「ハルトマンの妖怪少女」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.3

「ハルトマンの妖怪少女」は、東方Projectの第11作「東方地霊殿」のエクストラステージのボス、古明地こいしのテーマ曲だ。この曲は、こいしの持つ無意識の力を表現したかのような、不思議で美しいメロディーが特徴的だ。数多くのサークルがボーカルアレンジを行っているが、今回はその中から、CYTOKINEの「sEE NEW THE WORLD, SHE KNEW THE WORLD」をご紹介したいと思う。

sEE NEW THE WORLD, SHE KNEW THE WORLD

CYTOKINEは、2006年にはCDをリリースしていた、東方Projectの二次創作を中心に活動する同人サークルの古参メンバーだ。その最初期はインスト楽曲やボーカロイドによる歌唱が主だったが、途中からは歌ってみたコミュニティからの歌い手など、ボーカリストを積極的に起用するようになった。それに加えて、SOUND HOLICへの楽曲提供を通じて知名度を上げ、その活動は多岐に渡るようになった。かつてはイラストやデザインを担当する蒲焼鰻氏とアレンジャーの隣人氏が共同で運営するCYTOKINEから音楽作品もリリースされていたが、2011年末にCYTOKINEではイラストの制作のみを取り扱い、隣人氏の音楽作品は新たにZYTOKINEという新たなサークルでリリースされるようになった。

「sEE NEW THE WORLD, SHE KNEW THE WORLD」は、2011年の「BACKFLASH Audibility」に収録されたボーカルアレンジ曲だが、その初出は2009年の「a+jugos」まで遡る。初出のアルバムでは初音ミクが歌唱していた。2011年版ではitori氏による歌唱となり、アレンジも進化している。初出版の曲名は「seE new world, she knew the world」となっていて、2011年版とは微妙に異なっている。この表記は、アルバム内のギミックと関係している。「a+jugos」に収録された楽曲名の大文字のアルファベットを並べると「CYTOKINE」という文字列が現れるという仕掛けが施されているのだ。

隣人氏は東方アレンジのほかに「隣人P」として初音ミクやIAなどが歌うVOCALOID作品を手掛けたり、DJイベントへの出演、商業作品や音楽ゲームへの楽曲提供など、多岐にわたる活動を行っている。隣人氏と蒲焼鰻氏は実の兄弟で、蒲焼鰻氏が兄で隣人氏が弟だ。余談ではあるが、岸田教団の岸田氏は蒲焼鰻氏のイラストのファンで、岸田教団の初期のCDのアルバムアートワークデザインは蒲焼鰻氏が手掛けたものだ。

itori氏はCYTOKINE(および、ZYTOKINE)を中心として活動する活動するボーカリストで、柔らかく包み込むような歌唱が特徴。「itori」とは漢字で「絃鳥」と書くそうだ。この曲では英単語は登場しないものの、全英詩の曲のイメージが強く、英語での歌唱力も高い。CYTOKINEでのデビューから10年近く経つが、今年もZYTOKINEで歌唱するなど、長きに渡って活動し続けてくれている。

この曲は、こいしの無意識の力を儚げに歌った一曲だ。メロディーは、原曲の美しさを残しつつ、隣人氏らしいエレクトリックなアレンジが加えられており、ポップでキャッチーな印象を与える。itori氏の歌声も、クリアで伸びやかで、こいしの感情を表現しているかのようだ。歌詞では「なぜ私がここにいるか」「なぜあなたがここにいるか」という疑問を投げかけ、こいしの存在意義を問いかけているようにも、またこいしにとって大切な人は誰なのかとも問いかけているようにも聴こえる。こいしの内面を描写した深い歌詞と、美しいメロディーが融合した、聴き応えのある一曲だ。

以上、「ハルトマンの妖怪少女」ボーカルアレンジ厳選まとめVol.3として、CYTOKINEの「sEE NEW THE WORLD, SHE KNEW THE WORLD」をご紹介した。この曲は、こいしの無意識の力を表現した、儚くも美しいボーカルアレンジ曲だ。サブスクリプションサービスでも聴くことができるので、ぜひ、聴いてみていただきたい。次回もまた「ハルトマン」ボーカルアレンジ曲をご紹介する。お楽しみに!