【森羅万象】衝撃的なアレンジ「無意識レクイエム」を紹介|秘封倶楽部との関係とは?

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「ハルトマンの妖怪少女」ボーカルアレンジ厳選まとめ Vol.1

現在連載中の「ネクロファンタジア」「オーエン」の記事と並行し、『「ハルトマンの妖怪少女」ボーカルアレンジ厳選まとめ』という新しい連載がスタート!

東方Projectの原曲の中でも、特に人気の高い曲の一つが「ハルトマンの妖怪少女」だ。この曲は、2008年の原作「地霊殿」のExtra Stageボス、古明地こいしのテーマ曲として発表された。こいしの持つ無意識を繰るという能力を表現した、不思議で幻想的なメロディが特徴だ。原曲人気の高さに比例して、様々なジャンルのアレンジ楽曲が多数生み出されている。

この連載では、「ハルトマンの妖怪少女」ボーカルアレンジの中から、東方アレンジだいすきクラブが厳選した楽曲を各回1曲ずつご紹介していく。アレンジの特徴や魅力、誰がアレンジしたのか、誰が歌っているのかなど、詳しく解説していくぞ。

これまでの連載同様に、各種サブスクリプションサービスで聴ける楽曲のみを取り上げている。サブスクで聴けない楽曲にも名曲は多く存在し、紹介できないことが心苦しいが、今回は原作者であるZUN氏や権利者であるアレンジャーやボーカリストの方々への収益分配を優先するという方針を取らせていただいた。

無意識レクイエム

「ハルトマンの妖怪少女」ボーカルアレンジ厳選まとめの記念すべき第一回は、森羅万象の「無意識レクイエム」を取り上げたい。近年のハルトマンアレンジの中でも大ヒット曲で、外せない一曲となっている。

「無意識レクイエム」は、2018年にリリースされた森羅万象のアルバム「シンクロ2」に収録された楽曲。kaztora氏と「Foxtail-Grass Studio」のハム氏による合作アレンジだ。あよ氏がボーカルを務め、ticat氏が作詞を手掛けた。(ticatと表記し、「ちけっと」と読みます。)

この曲の最大の特徴は公式MVにあるだろう。夜好ころろ氏とジョイフル氏によって制作された公式MVは、都市伝説やオカルトをテーマとする「東方深秘録」における古明地こいしが元ネタとなっている。同作に登場するこいしは、「本怖!貴方の後ろにいるよ」という二つ名をはじめとし、「今から貴方の所に行くね」というオカルトアタック、怪ラストワード「*今から電話をするから出てね*」のアクションなど、いずれも都市伝説の「メリーさんの電話」がモチーフの一つとなっているようだ。公式MVはYouTube上で公開されている。※ホラー表現が含まれるため、苦手な方はご注意ください。

オカルトボールなど、深秘録のモチーフが散りばめられている

「無意識レクイエム」の曲調は、原曲の緊張感と神秘感を保ちつつ、ロック調の楽曲に仕立て上げられている。こいしのダークさ、無邪気さと狂気さを表現するかのように、シンセサイザーやエフェクトなどの電子音、様々な環境音が組み合わされている。あよ氏のボーカルも、歌詞の内容に合わせて歌い方や声色を変化させていて、非常にレベルが高く聴きごたえのある歌唱となっている。

この楽曲の歌詞は、こいしの「無意識を繰る程度の能力」をテーマにしていることは伺えつつも、解釈が難しい内容となっている。筆者の手元にある「シンクロ2」のブックレットを見ると、ticat氏が作詞した楽曲にのみ、意味深にも原曲表記末尾にa~dという文字がついている。アルファベット順に並べると、「children’s game」「無意識レクイエム」「YummyYummy! Raspberry!」「雨、時々、カランコロン」という順序となる。ticat氏がpixivに公開した「終わらないパラレルワールドのその先へ」では、上述の4曲を示唆するショートストーリーを、秘封倶楽部の二人ものと思われる会話で表現している。このことからも、単体の楽曲で考察できるものではなく、アルファベット順の4曲に繋がったストーリーがあると考えるのが自然だ。秘封倶楽部に関係のある原曲は使用されていないが、「メリーさんの電話」のメリーさんとマエリベリー・ハーン(メリー)が掛け合わせられているなど、「無意識レクイエム」も秘封倶楽部の二人を主人公とした物語の一部である可能性が高い。

「無意識レクイエム」は衝撃的なボーカルアレンジだが、単なるホラー楽曲というわけではない。曲の枠を超えた繋がりは考察し甲斐があり、あよ氏の可愛らしくもレベルの高い歌声、オリジナリティのある音楽性がこの楽曲を特別なものとしている。是非この機会に聴いてみていただきたい。次回は、また別の「ハルトマンの妖怪少女」ボーカルアレンジをご紹介する。お楽しみに!